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ものをこわすのがしょうばいじけん

什器破壊業事件

海野 十三

「大洋」1939(昭和14)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,352 字 · 31 页

青空文庫

女探偵の悒鬱

「離魂の妻」事件で、検事六条子爵がさしのばしたあやしき情念燃ゆる手を、ともかくもきっぱりとふりきって帰京した風間光枝だったけれど、さて元の孤独に立ちかえってみると、なんとはなく急に自分の身体が汗くさく感ぜられて、侘しかった。

「つよく生きることは、なんという苦しいことであろうか?」

彼女は、日頃のつよさに似ず、どういうものかあれ以来急に気が弱くなってしまった。たったあれくらいのことで、急に気が弱くなってしまうというのも、所詮それは女に生れついたゆえであろうが、さりとは口惜しいことであると、深夜ひそかに鏡の前で、つやつやした吾れと吾が腕をぎゅっとつねってみる光枝だった。

彼女の急性悒鬱症については、彼女の属する星野私立探偵所内でも、敏感な一同の話題にのぼらないわけはなかった。だが、余計な口を光枝に対してきこうものなら、たいへんなことになることが予て分っていたから、誰も彼も、一応知らぬ半兵衛を極めこんでいたことである。

ところが、或る日――星野老所長は、風間光枝を自室へ呼んで、

「君はなにかい、帆村荘六という青年探偵のことを聞いたことがないかね」