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ものをこわすのがしょうばいじけん
什器破壊業事件
海野 十三
「大洋」1939(昭和14)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,352 字 · 31 页
と、だしぬけの質問だった。
帆村荘六――といえば、理学士という妙な畑から出て来た人物だ。それくらいのことなら光枝も知っているが、他はあまり深く知らない。そのことをいうと、老所長は、
「あの帆村荘六という奴は、わしと同郷でな、ちょっと或る縁故でつながっている者だが、すこし変り者だ。その帆村から、若い女探偵の助力を得たいことがあるから、誰か融通してくれといってきたんだ。どうだ、君ひとつ、行ってくれんか」
「はあ。どんな事件でございましょうか」
「いや、どんな事件か、わしはなんにも知らん。ただはっきり言えるのは、彼奴はなかなかのしっかり者で、婦人に対してもすこぶる潔癖だから、その点は心配しないように」
老所長の言葉は、なんだか六条子爵のことを言外に含めていっているようにも響いた。
とにかく風間光技は、日毎夜毎の悒鬱を払うには丁度いい機会だと思ったので、早速老所長の命令に従って、自分の力を借りたいという帆村荘六の事務所へでかけたのだった。
帆村の探偵事務所は、丸の内にあったが、今時流行らぬ煉瓦建の陰気くさい建物の中にあった。びしょびしょに濡れたような階段を二階にのぼると、そこに彼の事務所の名札が下げてあった。