轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
いまどしんじゅう
今戸心中
広津 柳浪
「文芸倶楽部」1896(明治29)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,688 字 · 74 页
御道中をお気をおつけなさいよ。貴郷にお着きなすッたら、ちょいと知らせて下さいよ。ね、よござんすか。こんなことになろうとはね」
「何だ。何を言ッてるんだ。一言言やア済むじゃアないか」
西宮に叱られて、小万は顔を背向けながら口をつぐんだ。
「小万さん、いろいろお世話になッたッけねえ」と、平田は言いかけてしばらく無言。「どうか頼むよ」その声には力があり過ぎるほどだが、その上は言い得なかった。
小万も何とも言い得ないで、西宮の後にうつむいている吉里を見ると、胸がわくわくして来て、涙を溢さずにはいられなかッた。
お梅が帽子と外套を持ッて来た時、階下から上ッて来た不寝番の仲どんが、催促がましく人車の久しく待ッていることを告げた。
平田を先に一同梯子を下りた。吉里は一番後れて、階段を踏むのも危険いほど力なさそうに見えた。
「吉里さん、吉里さん」と、小万が呼び立てた時は、平田も西宮ももう土間に下りていた。吉里は足が縮んだようで、上り框までは行かれなかッた。
「吉里さん、ちょいと、ちょいと」と、西宮も声をかけた。
吉里は一語も吐さないで、真蒼な顔をしてじッと平田を見つめている。