轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
いまどしんじゅう
今戸心中
広津 柳浪
「文芸倶楽部」1896(明治29)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,688 字 · 74 页
「そうさね。どうでもいいんだけれど、何しろ寒くッて」
「本統に馬鹿にお寒いじゃあありませんかね。何か上げましょうね。ちょいとこれでも被ッていらッしゃい」と、お熊は衣桁に掛けてあッた吉里のお召縮緬の座敷着を取ッて、善吉の後から掛けてやッた。
善吉はにっこりして左右の肩を見返り、「こいつぁア強気だ。これを借りてもいいのかい」
「善さんのことですもの。ねえ。花魁」
「へへへへへ。うまく言ッてるぜ」
「よくお似合いなさいますよ。ほほほほほ」
「はははは。袖を通したら、おかしなものだろう」
「なに、あなた。袖をお通しなすッて立ッてごらんなさい、きッとよくお似合いなさいますよ。ねえ、花魁」
「まさか。ははははは」
「ほほほほほ」
吉里は一語も発わぬ。見向きもせぬ。やはり箪笥にもたれたまま考えている。
「そうしていらッしゃるうちに、お顔を洗ッていらッしゃいまし。その間にお掃除をして、じきにお酒にするようにしておきますよ。花魁、お連れ申して下さい。はい」と、お熊は善吉の前に楊枝箱を出した。
善吉は吉原楊枝の房をッては火鉢の火にくべている。
「お誂えは何を通しましょうね。早朝んですから、何も出来ゃアしませんよ。