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けさのゆき

今朝の雪

宮本 百合子

「婦人朝日」1941(昭和16)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,936 字 · 24 页

青空文庫

「びっくりなさった? 御免なさい」

一目でわかるカネボーの大きい紙包を下げてそこに笑っているのは小関紀子であった。

「まあ……。思いがけないのねえ」

峯子は、全く意外そうにのろのろと椅子から立ち上った。紀子は黒い純毛の厚地外套の前をいくらか引上げるような身ごなしで立ったまま、室の様子を机から壁へと眺めまわしながら、

「素晴らしいわねえ! 一度是非御活躍の様子を見せて頂きたいと思って」

いつもながらの紀子らしさに思わず半ば苦笑いで、

「とても素晴らしいわ……」

と云った。

「でもいい塩梅に、どうにかやれそうだけれど」

黙って微笑んでいるとき子の眼の中に、訪問客の意外さばかりでないぼんやりしたおどろきの色がひろがった。新宿の人ごみの中で良人の坂本と連れ立って歩いている紀子に逢ったのは、僅か半年ほど前のことだが、その頃の紀子と、今日みる紀子とは、どこかひどく違ったところがある。

「お茶もないのよ、御免なさい」

と云う峯子の印象も同じと見えて、

「いかが? お変りなし?」

そう訊く声に、何かの変りを予想している響がこもった。

「ああ、いつか夕方、新宿でお会いしたでしょう。