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えせものがたり
似而非物語
山本 周五郎
「週刊朝日涼風読物号」朝日新聞出版、1952(昭和27)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,817 字 · 64 页
七
連銭葦毛の駒にも乗っていないし若くもない。だがそれらをひっくるめたよりも、遙かに偉大な人間になっている。彼こそは黒門の婿、登女の良人となるべき人物である。お登女さまはこう云うのであった。
このあいだに、杢助はいびきをかきながら眠っていた。
七
第一の修業者が来たのは、それから七日ばかりのちのことであった。飯篠老人は、季節がよくなると来はじめる、と云ったようだが、こんなことにもしゅんがあるのかもしれない。続けて第二、第三、第四、第五と、三十日ばかりのあいだに五人の修業者がやって来た。
草庵は賑やかになった。というのはお登女さまの来た日、(お登女さまが帰ったのを杢助は知らなかったが)例の五人組の娘たちが押しかけて来て、宵のくちまで騒いでいった。彼女たちも彼が長威斎だという噂は聞いたらしい、だが彼女たちにはそんなことはどっちでもよかった。大先生であろうと杢助であろうと、彼に対する彼女たちの気持は少しも変らず、またそれについて些かの矛盾も抵抗も感じないようであった。
彼女たちはその後も、三日おきくらいにやって来て、一日じゅう賑やかに騒いでいった。杉谷は牛窪村から二里余りあるので、さすがに毎日というわけにはいかないらしいが、ちょうど出作りの時期で、村の大部分の男女はいなかった。