轻松读懂日语经典作品
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なにもの
何者
江戸川 乱歩
「時事新報 夕刊」時事新報社、1929(昭和4)年11月28日~12月29日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 38,449 字 · 77 页
「エエ、弘一君は多分スイッチを押す間がなかったのでしょう」
甲田君が答えた。
「私は書斎へ駈つけると、先ず壁のスイッチを押して電燈をつけました。すると、部屋の真中に弘一君が血に染って気を失って倒れていたのです。私はすぐ母屋の方へ走って行って、大声で家の人を呼び立てました」
「その時君は賊の姿を見なかったのですね」警部が来着と同時に聞き取ったことを、もう一度尋ねた。
「見ませんでした。もう窓の外へ出てしまっていたのでしょう。窓の外は真暗ですから……」
「その外に何か変ったことはなかったですか。ほんの些細なことでも」
「エエ、別に、……アア、そうそう、つまらない事ですけれど、私がかけつけた時、書斎の中から猫が飛び出して来てびっくりしたのを覚えています。久松のやつが鉄砲玉の様に飛び出して来ました」
「久松って猫の名ですか」
「エエ、ここの家の猫です。志摩子さんの愛猫です」
警部はそれを聞いて変な顔をした。ここに暗の中でもハッキリと賊の顔を見たものがあるのだ。だが、猫は物を云うことが出来ない。
それから結城家の人々(召使も)赤井さん、私、其他来客一同が質問を受けたが、誰も別段変った答えをしなかった。