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かじつ

佳日

太宰 治

「改造 第二十六巻第一号」改造社、1944(昭和19)年1月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,912 字 · 30 页

青空文庫

私は、その時はじめて、その正子さんにお目にかかったわけである。ひどく若い。そうして美人だ。私は友人の幸福を思って微笑した。

「や、おめでとう。」いまに親友の細君になるひとだ。私は少し親しげな、ぞんざいな言葉を遣って、「よろしく願います。」

姉さんたちは、いろいろと御馳走を運んで来る。上の姉さんには、五つくらいの男の子がまつわり附いている。下の姉さんには、三つくらいの女の子が、よちよち附いて歩いている。

「さ、ひとつ。」小坂氏は私にビイルをついでくれた。「あいにくどうも、お相手を申上げる者がいないので。――私も若い時には、大酒を飲んだものですが、いまはもう、さっぱり駄目になりました。」笑って、そうして、美事に禿げて光っているおつむを、つるりと撫でた。

「失礼ですが、おいくつで?」

「九でございます。」

「五十?」

「いいえ、六十九で。」

「それは、お達者です。先日はじめてお目にかかった時から、そう思っていたのですが、御士族でいらっしゃるのではございませんか?」

「おそれいります。会津の藩士でございます。」

「剣術なども、お幼い頃から?」

「いいえ、」上の姉さんは静かに笑って、私にビイルをすすめ、「父にはなんにも出来やしません。