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しゅんかん
俊寛
倉田 百三
「新小説」1919(大正8)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 43,192 字 · 88 页
その時清盛は二人の武士に命じて左右から父の手を捕えて地べたにねじ伏せさせ、「彼にわめかせろ」と言ったそうです。二人の侍はさすがに気の毒になって、小さい声で耳もとにささやいて「何とでもいいから声をたてなさい」と言った。するとおゝ何たることでしょう。父はつくり声で悲鳴をあげたそうです。清盛は大笑いして勝ち誇ったようにふすまをあけて出ていった。その時の父には無念の表情よりもむしろ責苦をのがれた安堵の色が見えた。こういうことをはたで見ていたと言って、明らかにわしをからかう意図を見せて詳しく詳しく語りました。そして彼らは父がかかる怯懦なる器量をもって、清盛を倒そうともくろんだのは、全く烏滸の沙汰であると放言しました。むろん、わしは彼らの話の細部は信じなかった。しかし黙って聞いていなくてはならなかったのです。
康頼 いつもは私の車の先払いの声にもふるえあがった青侍が、急に征服者のように傲慢な態度をもってのぞみだした。彼らと車を同じくすることだけでも堪えられない恥辱と思っていたのに!
成経 わしは同志の安否を気づかいました。しかしだめだった。彼らは何ごとをも隠して語らなくなったから、わしは牢獄の中で幾たびも壁に頭を打ちつけて死のうとしました。