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しゅんかん
俊寛
倉田 百三
「新小説」1919(大正8)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 43,192 字 · 88 页
そしてそうなるのは無理はないと思う。わしは実際いっしょに暮らしよい人間ではない。自分でそれを認める。わしはきらわれてもしかたがない。あゝ、しかしわしはさびしいのだ。きらわれたくはないのだ。愛されたいのだ。それだのにわしは荒いことを言う、ひねくれたことを考える。気まぐれな小鬼めがわしの生命中に巣を食っているようだ。わしの気質は自分の自由にならないのだ。わしは孤立無縁の霊魂だ。人とやわらぐことのできない粗野な性格だ。わしはわしを呪う。わしを憎む。おゝわしをあわれむ。
康頼 俊寛殿。心を平らかにしてください。わしはあなたを責める気は少しもない。あなたはあまりに痛ましい。困苦寂寥の歳月があなたの忍耐力を奪ってしまったのだ。あなたは心の平衡を支える勇気を砕かれてしまったのだ。だれがわれわれのような境遇にあって自暴にならないでいられよう。わしはわしの心が砂のように崩壊するのを防ぐために必死の力をつくしている。しかも踏みしめても、踏みしめても、足下の大地のずり落ちるような心を制することができないのだ。
成経 わしは昨日巌の上に立って、一そうの船も見えない、荒れ狂う海を見ていたとき、強い強い誘惑を感じた。