轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ふしゅう

俘囚

海野 十三

「新青年」1934(昭和9)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,938 字 · 31 页

青空文庫

松永は何をしたというのだ?

「ああ、やっぱりあれだろうか? そうかも知れない。……イヤイヤ、そんなことは無い。夫はもう、死んでいるのだ。そんなことが出来よう筈がない」

そのときあたしは、不図床の上に、異様な物体を発見した。ベッドから滑り下りて、その傍へよって、よくよく見た。それは茶褐色の灰の固まりだった。灰の固まり――それは確かに見覚えのあるものだった。夫がいつも愛用した独逸製の半練り煙草の吸い殻に違いなかった。

そんな吸い殻が、昨日も一昨日も掃除をしたこの部屋に、残っているというのが可笑しかった。誰か、昨夜のうちに、ここへ入って来て、煙草を吸い、その吸い殻を床の上に落としていったと考えるより外に途がなかった。そして松永が、そんな種類の煙草を吸わぬことは、きわめて明かなことだった。

「すると、若しや死んだ筈の夫が……」

あたしは急に目の前が暗くなったのを感じた。ああ、そんな恐ろしいことがあるだろうか。井戸の中へ突き墜とし、大きな石塊を頭の上へ落としてやったのに……。

そのとき、入口の扉についている真鍮製のハンドルが、独りでクルクルと廻りだした。ガチャリと鍵の音がした。