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「ほぼ」のいんしょう

「保姆」の印象

宮本 百合子

「日本映画」1941(昭和16)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,705 字 · 6 页

青空文庫

にあらわれたものだったと思う。単なる插話という以上の子供と大人の生活のいきさつが圧縮されて出ているので、こまかに事柄を追ってみれば、ここに叱る母の無理なさ、つい鋏でジョキジョキやってしまった子供の邪気なさ、その家ではその頃子供に切りぬき絵を買ってやることに心づかないでいる庶民ぐらしの肌合いというものが、まざまざと出ている。

保姆はあのきずものになった着物を眺めて、子供が鋏を使いはじめたことを母親に知らせるべきだったとだけ云っているけれど、この現実のいい機会に、子供の遊びが大人の世界でのいたずらに辷りこむ微妙な関係の説明はされなかった。別の場面の母さんの会では、子供の叱りかたについての質問が出されていて指導者は叱りつけるより先に先ず母がその子がそれをしたわけを考えるようにと教えている。その質問も答えも、質問と答えとの限りでされているのだが、もし、あの切抜き遊びと着物を切ったいたずらとの場面で、その叱りかたの生きたモメントが展開されたらどんなに啓蒙的な効果があっただろう。

制作者たちが、この場面を、一つの插話なみにしか扱わなかったのは残念だった。保姆は、母親に切り抜き絵を買ってやれというには及ばないので、何か切ってもいい紙をあずけてやるんですねと一言方向を示せばいいのだろう。