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はいくのつくりよう

俳句の作りよう

高浜 虚子

「ホトトギス」1913(大正2)年11月~

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,854 字 · 91 页

青空文庫

どの辺まであった水がどの辺まで増したということまで的確な事実であります。が、周回七十何里という琵琶湖の水はたとい五月雨が何日降り続こうとも、どれだけ増したということは、そう的確に目に見えるものではない。瀬田川に落ちる水の嵩が高くなったとか、岸辺の水がいくらばかり多く草を浸すようになったとかいうような事実は決して皆無とは申されませんが、「へご鉢の水がこんなに増した」というほど明確な印象を人の頭に与えはいたしません。ただ湖面を眺めた刹那の感じは雨が濛々と降っておるとか、水が濁ったように見えるとかいう方がむしろ強くって、決して湖水の水嵩が高まったというような感じはそう強いものとは考えられません。あるいは去来が平生湖水の水嵩を熟知していて、ある湖辺の石垣のこの辺まで水が来るようになったのは湖の水が増したのだと、事実を的確に目撃してこの句を作ったのだ、というような解釈も下せぬことはありませんが、しかしそれはむしろ近代的の解釈でありまして、元禄の去来は、ただぼんやりと広漠たる湖上に眺め入って、同時に降り続くこのごろの五月雨のことに案じ入って、「こう降ってはこの湖水の水も増すであろう」