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はいくのつくりよう
俳句の作りよう
高浜 虚子
「ホトトギス」1913(大正2)年11月~
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,854 字 · 91 页
四
約束ができて、普通な文章もしくは談話などで使われる文字が運ぶ意味よりは、いま少し複雑な意味を運ぶようになっている。例えば、
菊の香や奈良には古き仏たち
という芭蕉の句がある。これなどは普通の文章を解釈するつもりで解釈したならば、ほとんど何のことだか分からなくなる。けれども俳句の上にはそこに特別な約束があって、仏たちという名詞で止っている下には「がたくさんある」というごとき意味を自然に含ませることになっている。また菊の香という名詞の下には「の馥郁たるがごとく」という文字とか、また温雅なる色彩とか、蒼古な感じとかいうような、菊の花に付属する種々の連想がやはり省約されているものとみなされることができる。
四
それでこの句の意味は菊の花の人に与える感じが奈良の古き仏たちが人に与える感じとどこかに似通ったところがある。その感じを作者が表すのがこの句の目的になっている。だから長い文章でこれを表す場合には、数十言もしくは数百言を費やさなければならぬ。けれども俳句となるとわずかに十七字でその複雑な意味を運び得ることになっている。これは俳句というものが特別に約束された文字の働きを持っているからである。