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はいくのつくりよう
俳句の作りよう
高浜 虚子
「ホトトギス」1913(大正2)年11月~
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,854 字 · 91 页
頂の大きな松や春の山
鎌倉の源氏山の頂には大きな松が二本あります。
一匹は見えで鳴きけり猫の恋
一匹はちゃんと見えているが他の一匹は何処にいるか判らぬ。しかし鳴いているのはたしかに二匹であることを知っている場合であります。
時鳥鳴くといふ森の高さかな
この森で時鳥が鳴くと人に話されて見上げた場合であります。鎌倉でも八幡の森ではよく時鳥が鳴くそうであります。
潮風を恐るゝ庭の牡丹かな
これも鎌倉の実情であります。潮風さえ来ねば菊でも牡丹でも鎌倉はよくできます。一度潮風の激しいのが来たら最後すっかり駄目になってしまいます。
梶棒を下ろして飲みし清水かな
かつて藤沢から車で帰った時であります。大仏の表の方に湧いている清水を、車夫はちょっと梶棒を下ろしてうまそうに飲みました。
床の間の古き壺やな五月雨
私は古い大きな壺を一つ床の間の隅に置いています。いつも置いているのでありますが、その素焼のよごれた壺は、五月雨の降る暗い日などことに心に入みて眺められます。
富士詣一度せしといふ事が安堵かな
これは信心のためというのではありません。ただ人のよくする富士詣ということを自分も十余年前に一度したことがあるということが、ひとつの安心であるというのであります。