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ひかりあういのち

光り合ういのち

倉田 百三

「いのち」1937(昭和12)年2月号から連載

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 页

青空文庫

観客は喝采した。

「今度は兎ちゃん。白兎が出るのよ」

とすみ子がしゃべった。

「駄目、黙ってらっしゃい。言ってしまっちゃ駄目よ」

これも息を飲んでる姉が言った。

が出て来たのは白兎ではなかった。真黒な、目のギラギラする猫であった。

「今日は違うわ」

とすみ子は言った。が私の目を惹いたのはその瞬間横のビロードのカーテンの蔭から出て来て、その黒猫を抱いて一寸洋服の裾をつまんで観客にしなをして引っ込んだ洋服の少女であった。

「今の何というの?」

「天花――天勝の娘じゃそうな」

すみ子が教えた。私は番組を見て、彼女の又出て来るのを待った。

程なく天花が出た。彼女はばら色の洋装して片手に大きな時計の盤を持ってあらわれた。彼女の芸は客に勝手に時間を言わせて、クルクル針を廻わすと、ちょうどその位置に針がとまるのであった。

客はめいめい時間を言った。果してキチンとその位置にとまった。喝采が起った。

「はい。どなた様か、もう一人」

「百三さん言ったがええ」

と姉は言った。

「六時二十三分」

と私はむつかしく出た。

「はい」

と天花は笑いながら私の方を見て、ひよいと頭を下げて、

「お客さまのおのぞみは六時二十三分でございます。