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ひかりあういのち
光り合ういのち
倉田 百三
「いのち」1937(昭和12)年2月号から連載
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 页
私は初めてそんな目に遇って心が揺いだ。部屋に帰ると、下腹が痛いので又寝ころんだ。
「苦しいんじゃんしょう」
「少し腹が痛いの。でもすぐ直ります」
彼女は仁丹入れから四、五粒出して飲ませてくれた。
その儘じっと枕下に坐っていた。
「こうしてると可笑しいがなあ」
と私は言った。と何かの爆発するような声が聞えた。
「看病させてつかあさいな」
その声は純情と哀願とに充ちていて、私は抵抗出来なかった。私は深く動かされた。私はそのまま目を閉じて、彼女のするにまかせた。
桃林ではまだ三味の音、歌うぞめがきこえていた。
それ以来私はすみ子には愛と親味の何ものかを感じていた。もとよりそれは客観的には、少年と少女との愛の手習いのような、淡いものであったろう。しかし私の女性への観照と感覚とはこうしたことから育って行ったのであった。
しかし恋愛は運命だ。すみ子への愛はそれでも憧憬にはならなかった。可愛いものであって、鶴子のようにたましいをなやますものには高まらなかった。私はすみ子には幼いころ見た絵草紙から脱け出た娘が、父の浄瑠璃の中の世話物がかった娘に対するように、その美と情緒とに受身になって流れて行くよりなかった。