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ひかりあういのち

光り合ういのち

倉田 百三

「いのち」1937(昭和12)年2月号から連載

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 页

青空文庫

と言っていた。

兄の信一は歌はつくらなかった。彼はしばらくして尾道の住友銀行に勤めるようになった。彼は※の店へもよく立ち寄るようになった。快活で人に好かれ、押しもあった。

日曜日にはよく私を漁に誘った。

このあたり一帯の海は魚が豊富で、そして美味なのであった。

「僕の家は段々古びてそして、貧乏になって行くばかりだ。僕は神主なんてものは時代に合わんと思うね。『海の幸をささげまつる』なんて、漁撈の事ひとつ言うのでも父のはこうした形なんだ」

彼は舷から下した糸を指であつかいながらこう言って、半ば相談を持ちかけるのだ。

「しかし君のお父さんはエラいよ。神道というものも立派なものらしいし、僕は考えが変ったね。だいいち祝詞なんてものは素晴らしいものだからね」

「しかしそれは文学としてだろう。神主というものの社会的地位は一種のユーモアだね」

「それはひどいと思う」

「少なくとも一種の悲劇だよ」

「僕は小さい時から太夫さんの子だとからかわれるのが一番辛かった。神主的な空気から出来るだけ逃れたかったね」

「それはしかし君の素質にもよるよ。君は実際的で神秘とか、美とかいうものはあまり考えないらしいからね」