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ひかりあういのち

光り合ういのち

倉田 百三

「いのち」1937(昭和12)年2月号から連載

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 页

青空文庫

草生を踏むやさしい足音がして、約束して置いたように彼女がやって来た。

私は立ち上って迎えた。

「やっと手があきました。ほっとしたわ」

「今夜はすばらしかった。花を咲かせたね」

「一年に一度だわ。それに今年は特別なの」

「豊玉媛、よかったなあ」

「そうか知ら。あたしおどりは嫌いじゃないわ」

「うむ。神楽というものはおもしろいもんだ。僕非常に好きになった。――ミスチックだ」

見れば彼女はもう無雑作な浴衣に着替えて、日常の鈴子に返っているのであった。

が私はやっぱりさっきの夢を追っていたかった。

「八乙女の中で誰れが一等きれいだった?」

「わからないわ」

「鈴子さん」

「あら」

と彼の女は声を立てたが、嬉しそうであった。

「色んな顔があるもんだね。あんまり丸ぽちゃは現代的で可笑しいね。あんたは冠かぶるとよく似合うよ。瘠せているから」

がこれには彼女は不服らしかった。

「いつも千早姿でいられやしまいし……」

だが、それにもかかわらず、彼女の特色はその瘠せぎすな、品よさにあるのであった。ちょうど、今夜彼女が開いて舞うた扇のように、骨細の美しさが彼女にはあった。

また彼の女の美しさは目の前の白い、円い小石の浜辺の洲に似ていると私は思った。