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ひかりあういのち
光り合ういのち
倉田 百三
「いのち」1937(昭和12)年2月号から連載
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 页
「今度奥へ帰って御覧、何てきれいな、垢ぬけした子になったかとおどろかれるから」
伯母がこう言ったのはお世辞では無かったらしい。つまり私の目的は達したわけだ。だが私は苦笑した。私の志はもう別にあったからだ。
翌る朝まだ暗いうちに私は出発した。父の店の前髪の末吉という私より二つ年上の少年が、いいと言うのを聞かずに市村という三里ある村まで送って来てくれた。
いよいよお別れという時、末吉は涙をこぼしていた。私の事を尾道の方言で、「坊さん、坊さん」と言って、少年同士一年間色々と親しみ合ったのだ。私も悲しくなった。橋のところで別れたが、幾度振り向いてもまだ立って見送っていた。いよいよ曲り角で、私はステッキを振って合図して別れた。
いよいよ尾道を離れたのだという気が急にした。
私は足を速めてスタスタと歩き出した。道路の傍の電柱を数えながら、一里をどの位早く歩けるかを測りながら歩いた。人力車も幾つも追い越した。旧道があれば、喜んで山道の坂を越えて距離を短縮した。歩くことが目的であった。その心の底には高見山で安子にからかわれたことの屈辱感があったのだ。
がそのようにしても、宇津土、甲山を経て、吉舎に着いた時にはもう暮れ近くなって、足は棒のように疲れた。