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ひかりあういのち
光り合ういのち
倉田 百三
「いのち」1937(昭和12)年2月号から連載
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 页
「おうい、みんな起きて来て見ろ、霧の海だ」
「霧の海だ。島が見える。島が見える」
友だちの声々に跳ね起きて外に出て見ると、ようやく明け初めた空にもうもうと一面の霧だ。そして東天紅くなりそめると共に、あち、こち高い峰の頂きが島のように霧の海から秀を抜いて見えているのであった。
暁を早く知る小鳥たちのように、私たちが歓呼の声をあげると、間もなく紫に、紅にささべり彩る日の出が霧を染めて登って来るのであった。
比叡尾の山のあけぼのに
紅匂う花がすみ
と私たちは声を揃えて校歌を唱う。
神秘の狭霧はなかなか晴れようとはせぬ。
やがて風が出て霧がちぎれ初めると紫色に染みながら、団々として飛んで行き、麓にひろがる三次平野や、めぐり流れる川々のパノラマが剥げ展がって行く。
やアハれ
朝まにゃ小烏、霧をはらえ
こんな唄を唱って木樵りが下りて行く。
夏から秋にかけて霧は低く通学の路の上にも這って、私たちは霧の中を歩いて二十丁、遠くの友の姿も見えずに学校に通うのだ。
毎年秋の発火演習の時にも霧の中から剣光帽影が閃めいたのがハッキリ目の前に浮んで来る。
「霧立ち罩むる犀川を」という川中島の戦いの歌を誦する度びに私は馬洗川や、西城川の霧のことを連想した。