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ひかりあういのち

光り合ういのち

倉田 百三

「いのち」1937(昭和12)年2月号から連載

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 页

青空文庫

その反対の方角は私にとって安易の道であるからだ。私の一生を私のたましいの発展の記録として見るときに、私が内を築くことに専心すること二十年の後に、外の世界に向かって踏み出して行ったことは、内面からの必要であることが解る時があるであろう。それが私にとっては自己克服の精進の道として、敢て難きに就き、成功のない世界に向かっての義務的の向上であることが肯かれる時もあるであろう。他人は世の中の現実に苦しめ、自分だけは玉のように清らかに生きる、大衆は塵のちまたに叫び、喘ぎ、怒りわめけ、自分ひとりは汚れの飛ばしりを受けず、世俗をぬいて円かに、涼しげに、顔をいがめずに生きて行くぞという風には今の私には出来ないのだ。効果はどうであろうとも、私の生涯はその生長と推移のコースを動いて行かねばならない。そのかみの村上先生の姿は私をふるさとの安けさに誘うけれども、私はその郷愁に打ち克って困難の道を行こうと思うのだ――かくて死ぬときには果してどのような心境と環境とに於いてであろうか。「叡智」のみがそれを知っているであろう。

さて村上先生が去られてから私はたちまちに図画への興味を失ってしまった。