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ひかりあういのち
光り合ういのち
倉田 百三
「いのち」1937(昭和12)年2月号から連載
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 页
彼は上目使いしてこう言った。どこからそうした媚びを得て来たものか知れなかったが、彼の切れ長の目は絵巻の小姓のそれのような冴えを持っていた。
「手紙はあげるよ。だが自転車なんか買って貰ったりして、宮本とどこへ行ったんだ?」
「吉舎へ、女学校の運動会を見に行ったんです」
「莫迦」
と私は叱った。
「でも宮本さんがどうしても行くと言って肯かなかったんです」
と悄気て見せたが、すぐ狡るそうな目付をして、
「宮本さんはしつこいから嫌です。毎日遊びに行かないと機嫌が悪いのです」
私は嫉妬に似た感情と戦争心とを煽られた。
「君は宮本のチャームだって人が言ってるよ」
「親切にして下さるから仲よくしてるだけなんです」
彼は額を赤らめもせずにこう言って、試めすように私の顔を見ていたが、
「あなただったらいいんだけれど」
「僕は何も買ってあげられないよ」
「何も要りません」
と彼は強く言った。「今夜鵜船を見に行きません?」
「行ってもいいよ」
と私は言ったが、何か腹の中がぞくぞくとした。私たちは夜巴橋で逢う約束をして別れた。
私はその頃太閤記を読んでいた。そして信長が小姓たちを愛する気持ちに、或る男性的な美を感じていた。