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ひかりあういのち

光り合ういのち

倉田 百三

「いのち」1937(昭和12)年2月号から連載

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 页

青空文庫

自然への私の詩情はこの西城川の川遊びが揺籃だったらしい。水着も手拭もなく、真裸で、帯でふくのだ。鼻の尖きが光るので砂をつけて、帰ってから叱られるのをゴマ化していた。

川原には月見草や、あざみなど咲いていた。友だちところころと堤をころがって遊んだ。帰ると祖母がお給仕して、お茶漬けと言ってらっきょうをさいに六、七杯も飯を食べた。健康な、自然児だった。

川ではよく取っ組み合いが始まり、陸の仇を水の中でとったりした。しかし私は一度も喧嘩したことはなかった。私は今日まで人から撲られたことはない。人を撲ったことは三十八の時一度あるきりだ。それは後に書く。

螢狩りもこの川ふちでしたのだ。私はひとりでとりに行くのが好きだった。神秘な夜の川瀬の音。高く低く迷うように飛ぶ螢。啼く虫の声。私は夜霧にぬれて飽かずに川ふちを歩いたものだ。

七夕の笹を流しに行ったのもこの川だ。五色の色紙の短冊のついた笹は見る見る流れに嚥まれて行く。つい一昨日この川で硯を洗って、「七夕の天の川」とか、「彦星と織姫さま」とか一生懸命書いたばかりなのに。

過ぎ行く歓楽、軽い無常に似た感じを持ったのをよく覚えている。