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ひかりあういのち

光り合ういのち

倉田 百三

「いのち」1937(昭和12)年2月号から連載

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 页

青空文庫

父が悲しみにくず折れているときに、近所の者、出入りの者が皆で葬式の支度万端をし、うるさい、細い相談などせず、しかも浪費にならないようチャンとやってくれるのだ。

社会生活の単位。運命共同体の細胞というものはこうした共同的、自治的、部落的のものでなくては決して活ける共同体ではないのである。

新しい墓が出来た。義兄は姉の法名、佳室妙豊大姉というのを彫りつける下書きを文人的凝り性から、何百枚も書き直しては丹念に書いていた。

これが私が肉親の死に遇った初めだった。これは私には大きな、恐しい打撃だった。一体どうしてこんな事があるのだろう。もう永久にあの姉と遇うことはないのだろうか。私は考えるとたえ切れない気がした。私はその事ばかり考えて上野池の堤のまわりを歩いた。

「西城へ行かしてやってよかったのう」

父は母とこういって又泣いていた。私もあの西城行きが一生の思い出になってしまった。二十六で死んだ姉、華やかで、強気で、涙もろくて、清らかな心情と義侠的なところのあったこの長姉のことは一生私の心に深く深く烙きつけられている。或る意味で私の一面の守護の女神のように立っている。