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ひかりあういのち

光り合ういのち

倉田 百三

「いのち」1937(昭和12)年2月号から連載

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 页

青空文庫

4

私が生活にまけて貧乏臭く、ケチな量見になろうとする時、亡き姉は華やかに、女王のように笑いこぼれて私の前にあらわれる。私が持って生れた弱気を出して妥協的になろうとするとき、彼女は女だてらに平手で客の頬を張ったような威勢のいい姿を現わして、私に「やれ、やれ」と激励する。

そして私が限りなくなつかしく忘れられないのは、あの西城行きの俥の上で、振りかえってはニッコリ笑み返してくれた笑顔である。愛し、愛されることは幸福である。素直な、よい人情、ハンブルな心ばえは幸福の源泉だ。それに比べれば富貴や、生産増大の如きは外面の外面の事にすぎない。私は少年時代私をつつんでいた天国的空気に比すべきものにその後ふれたことはないのである。まずやさしくあること、愛情に富むことそれが第一のことだ。後はそれからのことである。

4

私の父は立志伝などによく出て来る父のように子供に対して、殊更らに教訓的なポーズをとるといったところは少しもなかった。自然な、素直な人間であった。しかし、言わず語らずの間に私に感化と影響とを及ぼしてることは実に深いものがある。それは私自身さえ気がつかず、折にふれてなるほどと思い当るくらいなものだ。