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ひかりあういのち
光り合ういのち
倉田 百三
「いのち」1937(昭和12)年2月号から連載
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 页
こうした印象を幾つも幼児から積み重ねつつ、美と文化との何たるかを私たちは知って来るのである。
正月には鳥追いが来、在方の農家の娘たちは催馬楽という輪舞いのようなものをおどって来た。鄙びたものだが美しかった。それから忘れられないのは「敦盛さま」である。これは美しい旗さし物を飾った御座船を肩につるし、哀愁のこもった囃に合わせて、敦盛の討死の物語詩をうたうのだ。
敦盛さまは笛の役 その姫君は琴の役
私はその歌を聞きながら敦盛と玉織姫とがこの地上の最も高貴な、美しい、若いそして滅びる故に尚さら惜しまれる一対の気がした。あまり高貴でもろいために、この地上に生きることの出来ない存在のような気がした。子供の心にもちゃんとそうしたヴィジョンが浮かぶものだ。こうした誰れからも教えられない理念が未経験の童子の心にどうして起り得るのだろう。
こおろぎと蟻の話を聞いた時にも私は何ともなく蟻が下卑て、憎々しく、こおろぎが詩的で、美しい気がした。寓話の趣旨とはあべこべのことを考えていた。これは私の詩的素質のせいであろうか。一般人間性のひとつの要請であろうか。その両方であるかも知れない。