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はっけんでんだんよ
八犬伝談余
内田 魯庵
「南総里見八犬伝 下」日本名著全集刊行会、1928(昭和3)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,945 字 · 43 页
房総はすべて馬の背のような地形で、山脈が連亘して中央部を走っているが、高山も大山もない。伏姫が山入した富山(トミサンと呼ぶ、トヤマでもトミヤマでもない)の如きも、『八犬伝』に形容されてるような高峻な山ではない。最高峰の観音堂は『八犬伝』に由ると義実の建立となってるが、寺記には孝謙天皇の御造立となっている。安房は国史にはかなり古いが、徳川氏が江戸を開く以前は中央首都から遠い辺陲の半島であったから極めて歴史に乏しく、したがって漁業地としてのほかは余り認められていない。安房が著名になったのは全く『八犬伝』以来であるから、『八犬伝』の旧蹟は準史蹟として見てもイイかも知れない。
(『八犬伝』の地理学は起稿当初の腹案であったが、実地を踏査しなければ解らぬ個処が存外多いのですべて他日の機会に譲ることにした。『八犬伝』地図も添ゆる予定であったが、同じ理由で。)
五 馬琴の日記
『八犬伝』が日本の小説中飛び離れて挺んでている如く、馬琴の人物もまた嶄然として卓出している。とかくの評はあっても馬琴の如く自ら信ずるところ厚く、天下の師を以て任じたのは他にはない。