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こうえんのはなとどくが
公園の花と毒蛾
小川 未明
「朝日新聞」1922(大正11)年6月26日~7月10日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 18,574 字 · 38 页
八
「ほんとうに、そうですね。」
「あなたは、黒い百合の花をごらんになりましたか?」と、とこなつの花は、みつばちにたずねました。
みつばちは、小さな、すきとおるような、美しい羽をふるわして、
「黒い花ですって? 私どもは、黒い花は、人間の死骸から、生えたのだといっています。そして、毒があるといって、けっして止まりはいたしません。めったに、黒い花はないものです。なんでも黒い花を、ただ見ただけでも悪いといっていますよ。」と答えました。
とこなつの花は、これを聞くと、くびをすくめました。そして、男のいったことから、脊伸びをして、この近くに咲いているのを見ようとしたことを思い出して、思わずぞっとしました。
「なんで、そんなことをお聞きなさるのですか?」と、みつばちはたずねました。
「いいえ……。」と、とこなつの花はいって、黙ってしまいました。
ますます風の吹くのが、強くなりました。
八
「今日は、公園に、なにかあるのでしょうか。」と、花は、先刻から風の中を人々が、ぞろぞろと花壇のまわりを歩いているので、なんでもこの付近のできごとなら、知らないものがないほどくわしいみつばちに向かって、たずねました。