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こうえんのはなとどくが
公園の花と毒蛾
小川 未明
「朝日新聞」1922(大正11)年6月26日~7月10日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 18,574 字 · 38 页
十一
花は、頭をあげて、そばに立っている、電燈の光を見ますと、蛾が幾つも止まっているのでした。
十一
花は、たちまちのうちに、無数の黄色な蛾が飛んできたのを見ました。どの木の葉にも、またどの草の葉にも、蛾が止まっていました。ちょうど花びらの降りかかったように見えたのです。
急に、さわさわという音がして、燈火の光がうす暗くなったと思って、立っている電燈の方を見ると、幾百、幾千となく蛾が火を目がけて襲ったのです。そのために、光をさえぎったので、中には、ガラスに頭を打ちつけて、下に落ちる蛾や、火のまわりを、すきもあろうかと、羽ばたきをしながらまわるのや、いろいろありました。このとき、あちらに立っている電燈を見ても、同じような光景でありました。そして、羽の白い粉が、火の周囲の空間を、光ったちりのまかれたように散っているのでした。花は、いま蛾のいったことを思い出して、蛾の仲間が、ようやくここへやってきたのだと知りました。
この都会の火を消すために、蛾が襲ってきたのです。とこなつの花は、このたくさんな数えきれないほどの黄色の蛾が、いずれも二つのくるくるとした、円い人間の目のような目を持ち、長いひげと大きな口を持っているかと思うと、ぞっとするほど、恐怖を覚えたのです。