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こうえんのはなとどくが
公園の花と毒蛾
小川 未明
「朝日新聞」1922(大正11)年6月26日~7月10日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 18,574 字 · 38 页
賞は、私がもらいます。」と、おばあさんは、それになんの不思議があろうかといわぬばかりにがんばりました。
しかし、係のものは、頭を振りました。
「いいえ、賞品は、野菜を作った人の手柄をほめてあげるので、その他の人には、だれにも渡さないのです。この大根を作った百姓は、どこのだれという人だか、おばあさんにはわかりますまい。みごとな大根ですから、ここに並べておいて、みんなに見せるのはさしつかえないから、二、三日貸しておいてください。」と、係のものはいいました。
おばあさんは白目を向けて、係のものを見ながら、
「よく、そんなことがいわれたものだ。これは私のものだから、ほうびをくれないなら、さっさと持って帰りますよ。較べて見れば分かるものを、賞をくれるのを惜しんで、ただ貸してくれいもないものだ。」と、欲張りのおばあさんは、ぷんぷんと怒って、大きな二本の大根を抱えて、会場の入り口から出ました。
黄昏方の空は、水あめのような色をしていて、ひどい風が、ヒューヒューと音をたてて吹いていました。電線はうなって、公園の常磐木や、落葉樹は、風にたわんで、黒い頭が、空に波のごとく、起伏していました。