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こうえんのはなとどくが
公園の花と毒蛾
小川 未明
「朝日新聞」1922(大正11)年6月26日~7月10日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 18,574 字 · 38 页
」と、花は、しばしば、空想したのであります。
けれど、自然の大きな掟は、この小さい、ほとんど目に入るか入らないほどの花の叫びや、願いでは、どうなるものでもなかった。そして、夜となく、昼となく、深い谷底からわき起こる霧は転がるように、高い山脈の谷間から離れて、ふもとの高原を、あるときは、ゆるゆると、あるときは、駆け足で、なめつくしてゆくのでした。
その霧のかかっている間は、花は、うなされつづけていました。毒のある針でちくちく刺されるような痛みを、柔らかな肌に感じたばかりでなく、息苦しくなって、しまいには酔ったもののように、頭が重くなって、足もとがふらふらとして起っていられなくなるのでした。そして、全身に悪感を感ずるのでありました。
霧が去った後は、風に吹かれてぼたぼたと滴るしずくの音が、この広い野原に聞かれました。しかし、この苦痛は、この野原に生い立つすべての草や、石や、木の上にかかる運命でありました。せめても、とこなつの花は、そう思って、あきらめているのでありました。かたわらの石や、あちらの脊の高い草は、たとえ風に吹かれても、霧にぬれても、平気な顔つきをしていたのです。