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こうえんのはなとどくが

公園の花と毒蛾

小川 未明

「朝日新聞」1922(大正11)年6月26日~7月10日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 18,574 字 · 38 页

青空文庫

それで男は、毒が身体にまわって、なんでも死にそうだといいますが、私は、黒い百合の花に触れたのではないかと思います。」と、みつばちは答えた。

このとき、あちらでは、にぎやかな音楽の響きが起こっていました。なにかの催し事があるとみえるのです。

一方に悲しむものがあれば、また、一方に楽しむものがある。それが、この世の中の有り様でした。このとき、こちらに、ぞろぞろと歩いてくる人たちがありました。それは、みつばちが、先刻いった学者たちの一行であります。その中の白い洋服を着て、眼鏡をかけた一人は、とこなつの花の咲いている前に歩み寄りました。

「やあ、こんな花がここに咲いているのは珍しい。このとこなつは、高い山にあるとこなつです。」と、ほかの人々を顧みていった。

「どうして、こんなところに咲いているのでしょう。」と、その一人がたずねました。

「まれにあることです。風か、なにかで、種子が飛んできたのですね。」と、白い洋服の男は答えました。そして、手をさし伸べて、とこなつの花を根もとから引き抜きました。

鳥が、くわえてきて、ここに植えた、花の運命も、ついに終わりがきたのであります。