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きょうさんとうこうはんをぼうちょうして
共産党公判を傍聴して
宮本 百合子
「働く婦人」日本プロレタリア文化連盟、1932(昭和7)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,846 字 · 10 页
三月十五日は三・一五の記念日だから共産党の公判を傍聴に行こうとお友達○○○さんに誘われました。わたしはこれまで新聞で公判のことをときどき読んでいましたが、どうもよく本当の様子が分りませんでした。正直に云うとこわいもの見たさのような気もあって○○○さんと一緒に東京地方裁判所へ出かけました。
分りにくい建物の細い横のようなところから廊下をとおって、先ず公衆待合室というところへ行きました。外見は立派な役所に似ず薄暗いきたないところに床几が並んでいます。そこにもう二十人近い男女のひとが来ていましたが、初めてこういうところへ来て私が珍しく感じたことは、来ている人の多くが元気な眼つきをして互に挨拶したり話しをしたりして、ちっとも普通に裁判所と云うおっかないところに来ているようでもなくのびのびしていることでした。私は馴れないからショールを手にもって立っていたら○○○さんが「こっちで傍聴券貰いましょう」というのでついて行くと、又妙な階子段をのぼって、行けそうにもない衝立のすき間のようなところを抜けて、今度は石敷の大階段のある広いところへ出ました。そのガランとした廊下にテーブルを出して二人の巡査の見張っているところで傍聴券を貰いました。