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しゃしんにそえて
写真に添えて
宮本 百合子
「中條精一郎」(追悼録)、国民美術協会、1937(昭和12)年1月発行
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,315 字 · 7 页
その中で、優れたものを当時建築が完成しかけていた某邸の広間用として是非おとりになるようにするのだといって、自分の手で建てられた家のそれぞれの場所に、自分の気にも入った世界的レベルの絵画、工芸品の飾られるのを見て、深いよろこびと満足とを感じている様子でした。そういう時の、父の老いたが若々しい光のある顔は、美術品に対する無私な情愛というようなものに溢れており、娘の私の心をうごかしたものでした。
没する数年前、久しぶりでロンドンへ再遊しましたが、そのときの旅行の目的は父自身の愉しみが主眼ではなかったので、大して好きな骨董店まわりも出来なかったようでした。只、三十年前に指環、カフス・ボタンのような小物を買った店が、現在でも同様趣味のある小物を売っているので、懐しがっておりました。私に、折角ロンドンにいるのだから大英博物館だけは毎日でも行って見て置けと頻りにすすめました。特にギリシア室を見ろとも云い、美術的教養があるのでもない私も、或る親しさをもって見物しましたが、それには、また一つの思い出があったからでした。私が女学校の二年か三年で、英語のすこし長い文章がよめるようになった時、不敵にも教科書の英語でない、何かなかみも面白い英語の本がよみたくなりました。