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かんこんそうさいはかせ

冠婚葬祭博士

佐々木 邦

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1937(昭和12)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,762 字 · 30 页

青空文庫

「映画館の持主は何うでしょう? 毎回徒で見られます」

「しかし映画ぐらい知れたものです」

「芝居の方は?」

「さあ。これも大したことはありません。入院なら一月でも二月でも一年でも続きます。殊に失業の時なぞは薬抜きで行っている法もありましょう」

「これは好い智恵を授かった。光子さん、何うだね? ハッハヽヽ」

「丈夫なものは寄せつけませんわ。医は仁術ですから」

と光子夫人は卻けた。

「仁術で追っ払うのか? 矢っ張り医者の娘だ」

「私、それよりも、あなたのお郷里が温泉宿なら宜いと思いますわ」

「徒逗留が利くからかい?」

「えゝ」

「箱根は高かったからな」

「私、あなたが予定よりも一日早く切り上げた次第分っていましたわ」

「参った。ハッハヽヽ」

「オホヽヽヽ」

「しかし愉快だったな。ハッハヽヽ」

新婚旅行の思い出らしかった。御馳走になるお礼に、僕は謹聴していた。二人は可なり長く話した後、僕が咳をしたものだから、漸く存在を認めてくれた。

「お茶に噎せたんです」

と僕は弁解した。何あに、反省を促す為めに、態と咳いたのだけれど。

間もなく、奥さんが女中に何か命じに立って行った。

「君、何うですか?」