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かんこんそうさいはかせ
冠婚葬祭博士
佐々木 邦
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1937(昭和12)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,762 字 · 30 页
「おい、唸るとは何だ?」
と八田さんが鎌首を擡げた。この人はもう低い声で歌っていたのだった。
「何でも宜いから、慰藉料を五十円出し給え。君達の隠し芸には若手連中から苦情が出ているんだ」
「ふうむ?」
「二人で百円だ。それ丈け会費に入れゝば、若手の負担が軽くなる」
「しかし高いぞ、一人で五十円は」
「未熟の芸をこれ丈けの大人数に聴かせるんだから、安いものさ。只じゃ決して唸らせない。禁止税だよ」
と団さんは豪い権幕だった。皆手を拍って喝采した。毛利さんと八田さんは仕方なしに五十円宛祝儀を出して唸った。これが慣例になって、以来忘年会毎に五十円宛寄附する。のみならず、団さんが辛辣な批評をするものだから、余り長くやらない。重役連中が苦手にしているところを見ると、団さんは確かに骨がある。
さて、団さんの家へ出入する若手は早くて二三ヵ月、晩くても半ヵ年たつと必ずお嫁さんを貰う。元来縁談の為めに訪れるのである。然るに僕は三ヵ年伺候したけれど、無事息災だった。
「何うしたんだい? 君」
と大谷君が不思議がった。
「何うもしないよ。僕は君達とは動機が違う。単に先輩として敬意を表するんだから」