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ふゆのちょう
冬のちょう
小川 未明
「民政」1934(昭和9)年1月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,971 字 · 6 页
その晩の月は、明るかったのです。そして、地虫は、さながら、春の夜を思わせるように哀れっぽい調子で、唄をうたっていました。
幾たびか、眠られぬままに、からだを動かしていたちょうはついに、月の光を浴びながら、どこへとなく、飛び去ってしまいました。
そしてふたたび、彼女の姿は地上に見られなくなりました。
うすく霜の降りた、ある寒い朝、からたちの枝の先のところにしがみついて、金色の日の光を、ありがたそうに待っている青虫がありました。いじらしくも、そのからだには、わずかに羽が生えかかっているのでした。
たまたまかたわらにあった家の窓から、顔を出して、これを見た主人は、傷ましそうに、
「ああ。」と、感動して、声をあげました。なぜなら、彼はいまの時代に生まれてきた、自分の子供たちや、多くの子供たちのことについて、考えていたときであったからです。
「かわいそうに、こう寒くては、死んでしまうだろう。悪い時節に生まれてきたものだ。野にも、圃にも、花と光がないごとく、この社会にも、自由と空想と芸術が滅びたのだから。」