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とううん
凍雲
矢田 津世子
「婦人文芸」1934(昭和9)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,121 字 · 29 页
仙太は赤子を忘れたように、腕組みをして黙りこんだ。そして、気力なく立ち上り、自分から薬をとりに医者の家へ行った。
新町の通りで、時二郎に声をかけられた。
「仙太さん、なんと、窶れたなあ」
「仙一が具合わりくてな」
「そうかい、大事にな」
時二郎は行きすぎてから戻ってきて、
「お前、知ってるかい。お高さん、あさって県下から帰って来るってな」
「俺にあ用はねえ」
と、仙太は横を向いた。
翌々日、空は晴れあがっていたが、街道にはまだ処々に水溜りがあった。
仙太は、弱々しい寝息を立てている子供の傍で、久しぶりに髭を剃った。鏡の中の顔を見、子供の顔を見た。どっちも、げっそり痩せていた。
午すぎて、仙太は、山へ行く、と言ったなり黒をつれて家をとび出した。
「全で子供みてえなもんだな。好き勝手なことばかりして……」と、母親は愚痴っていた。
駅からの往還を町へ三丁手前の七曲りの松の傍まで来た時、仙太は時計を見た。そして根かたに寝転んだ。
馬車は一時三十五分に一台通った。仙太は立ち上ったが、また、寝転んだ。そして、そのまんま、ぐっすり眠った。
はっと気がつき、しまったと思った。