轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

とううん

凍雲

矢田 津世子

「婦人文芸」1934(昭和9)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,121 字 · 29 页

青空文庫

背中がぐっしょり濡れていた。時計は併し下りの馬車が来るまで、十分程あった。動悸のはずみを、じっと抑えた。

馬車が姿を現わすと、仙太は往来へとび出した。彼を慥かに視た。

「爺っちゃ、止ってけれ!」

馬車屋は、中の客へ早口に何か言って、馬に鞭をあてた。馬車は傾き、水煙りをたてて仙太の前を激しく揺れ進んだ。

「待て!」

と、仙太は叫んだ。

「話あるから、待て!」

仙太は馬車を追った。犬は吠え立てながら先を走った。

「なして、待たねえんだ!」

ようよう馬の手綱を掴えて、息を途切らし、いきなり馬車にとび乗りさま、お高に襲いかかった。

「仙太さん!」

お高は抵抗した。仙太はお高を馬車の外へ曳きずり落した。犬は二人のまわりをぐるぐる廻りながら吠え立てた。

「話きいて、さ」

お高は道に膝をついて、落ちつかせようと男の着物を合せた。ふと、ゆるんだ懐ろに剃刀を見て、

「あっ!」

と、鋭く叫んで、矢庭に下駄を投げつけた。

仙太は剃刀を思い出した。懐ろへ手をやった。馬車に逃げ込もうとした女の髪を引っ掴んで、ひき倒した。女は手で自分の喉を抑え、うつ伏せになろうと努力した。白い刃が閃いた。