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しゅっけものがたり

出家物語

坂口 安吾

「オール読物 第三巻第一号」1948(昭和23)年1月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,838 字 · 28 页

青空文庫

「私にオデン屋をやらないかなんて言った人があったけど、その人、ほかに野心があるらしいから、ことわったことがあったわ」

「二号になれというのだな」

「二号じゃないわ。奥さんよ」

「じゃア、野心でもないじゃないか」

「だって奥さんになれと言わずに、オデン屋をやるといゝって言うから、へんよ」

「いゝじゃないか」

「でも、私、その人、好きじゃないのよ」

「じゃ、勝手にするさ」

「そうよ。だから、おかしくないでしょう」

あれこれとトンチンカンなことを言って、飲みもせぬお茶をいれたり、散々ひまをつぶして、帰って行った。

いくらネバリやがっても一文も、でねえやと、幸吉は腹に赤い舌をだしている。

キヨ子の去ったあとに、手紙をよんでみると、一通は親戚の女からの当りまえの便りであるが、一通は男の手紙で、次のようなことが書いてあった。

急に僕と結婚したいようなことを言いだして、人をバカにするものじゃない。部長と課長の左セン騒ぎが起るまで気づかなかったが、あなたは部長、課長両方と関係があったそうじゃないか。土日は部長と、洋裁へ行くという日は課長と、火木は僕と、三人も相手に、よく化けてきたものだ。