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はつつぼみ

初蕾

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1947(昭和22)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,525 字 · 35 页

青空文庫

て助教に挙げられたのだそうで、もちろん身の上は隠してあるから、処士としては極めて異例だということだった。殿にはひじょうな御満足で、旧過は構いなし、儒臣として新たに召抱えるという仰せで、江戸邸ではすでに家臣の待遇をうけているそうだ」

「しかしあのような事があって」

と良左衛門はにがにがしげに云った。

「お上の御意はともかくも、半之助がさような御恩典をお受けする筈はないと思うが」

「若い者にはまたそれだけの思案があるのだろう、殿の御帰国はこの十日だ、おそらく半之助どのはお供をするだろう、そのときは意地を張らずに、褒めて迎えてやってほしい、こなたの快く迎えてやることが、半之助どのにはなによりの褒美だと思う」

隣りの部屋で体を固くしながら、話をここまで聞いていたお民は、それ以上は座にいたたまれず、胸ぐるしい気持で廊下へ出ていった。――あの方がお帰りになる、半之助さまが、そのことだけが頭いっぱいになって、どうしていいかもわからず、なにもかも見えなくなる感じだった。

「ばあや、どこへゆく」

小太郎がそう叫んだ。

「坊も伴れていって、坊も……」

門を出ようとすると小太郎が追って来た。