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こくこく
刻々
宮本 百合子
「中央公論」1951(昭和26)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,401 字 · 73 页
女が三人ばかりで眠っていると、ガチャンとひどい音を立てて監房の扉があき、
「ソラ、はいった、入った」
と面倒くさそうに云っている看守の声、何か押しかえして扉のところに立っている気勢がおぼろ気に感じられた。瞼をとおして、電燈の黄色い光りを感じ、もう一度、隣りの監房の開く音をきいた。誰か入って来たな。そう思い、体を少しずらせて場所をあけ、そのまま又眠りつづけた。(留置場生活が永くなると、特別な場合でない限り、眠ってから入れられて来る者に対して、無頓着に、幾分迷惑にさえ感じるのであった。)
朝になった。一番奥のところに昨夜入れられて来た若い女が、頬ぺたを濡手拭で押え、房さり髪を切った体をちぢめるようにして起き上っている。布団を畳む時、女給が、
「あのしと、ひどいけがしてんのよ」
といやらしそうにこっそり云って、せっせと臭い布団を抱え出した。蒼ざめた細面で立っている全体の物ごしで、すぐ左翼の運動に関係ある人と感じられる。
「けが?」
「…………」
合点する。傍へよって見て、これはひどい。思わず口をついて出た。
「やられたの?」
合点をし、微な笑いを切なそうな眼の中に泛べた。