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けんきょう

剣侠

国枝 史郎

「山形新聞」1936(昭和11)年3月~8月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 156,961 字 · 310 页

青空文庫

……ご承知のこととは存じますが、木曽福島には毎年半夏至の候、大馬市がございまして、諸国から馬持や博労が集まり、いくらとも知れないたくさんの馬の、売買や交換が行なわれ、大賑いをいたします」

「木曽の馬市なら存じて居る。日本的に有名じゃ」

「荒っぽい大金の遣り取りが行なわれますのでございます」

「もちろんそれはそうだろうな」

「そこを目掛けて諸国の親分衆が、身内や乾児衆を大勢引連れ、千両箱や駒箱を担ぎ、景気よく乗り込んで行きまして、各自の持場に小屋掛けをしまして、大きな盆を敷きますので」

「つまり何だな博奕をやるのだな」

「へい左様でございます。その豪勢さ景気よさ、大相もないそうでございます」

5

「賭場をひらくとは怪しからんではないか」

「などと仰せられても福島の賭場、甲州身延山御会式賭場と一緒に、日本における二大賭場と申し天下御免なのでございますよ」

「ふうんそうか、豪勢なものだな」

「本名は井上嘉門様、西野郷の馬大尽様が、この馬市でお儲けになる金高、大変もないそうでございます」

「云わずと知れた、そうだろうな」

「そこで親分方の乾分衆が、押しかけて行って無心をなさる」

「成程な、有りそうなことだ」