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げきのすきなこどもたちへ

劇の好きな子供たちへ

岸田 国士

「少年少女 第三巻第三号 別冊付録『劇の読本』」1950(昭和25)年3月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,550 字 · 15 页

青空文庫

をさすのである。それはどんなにこちょうされていても、また、どんなにひかえ目であっても、そこには真実というものがあふれている。その真実にふれることが、劇を見るものにとって、なにより面白いのである。

つぎに、劇の面白さは、日常生活の中でみられるものの面白さとは、おのずから違っているので、舞台の幕が開いている間は、たえずてきとうな速度で何かが進行している。その流れに自分も知らず知らずのせられていく心地のよさが、その一つである。

だから、劇は、いつでも、止ったり、つかえたり、しぶったり、よどんだりしてはならない。ときには急に、ときにはゆるやかにということがあっても、またときには、高らかにはげしく、ときには低く静かにということはあっても、いつもすらすらと気持よく、あるはやさで進んでいく、きまった調子が出ていなければならない。それはちょうど音楽が奏せられるようなもので、つぎからつぎへとくりひろげられる場面は、セリフとセリフ、動きと動きのつながりでできている音譜の演奏だと思わなければいけない。

稽古をつめばつむほど、演出家の目が行きとどいていればいるほど、劇が面白くなるのはそのためである。