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げきのすきなこどもたちへ
劇の好きな子供たちへ
岸田 国士
「少年少女 第三巻第三号 別冊付録『劇の読本』」1950(昭和25)年3月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,550 字 · 15 页
3 劇のほんとうのおもしろさはどこにあるか
ことに、一番いけないことは、劇の真似をすること、どこかで見たことのある劇の真似、あるいは俳優の真似をすることである。
ある人物に扮するということは、子供が子供なりの空想で、その人物を頭のなかに描いたそのままを、思いきって、自分のからだ、顔つき、動作、衣裳、声、言葉の調子、などで作りあげることである。
そこではじめて、誰の真似でもない、また、誰にも真似のできない、一人の人物のすがたが浮びあがる。それは、脚本のなかに文字で描かれてある人物をもとにしてはいるが、しかし、それはもう、演技者としての君が、君の空想と君の才能と、君の肉体とで、新しい生命をふきこんだ人物である。
その人物は君とともに生き、君とともに見物の前に立っている。その人物が、君の口をかりてしゃべり、君の眼をかりてよろこびの瞳をかがやかし、君の手をかりて涙をふくのである。
この奇蹟のようだが、なんのふしぎもない、手品のようでいて、すこしのごまかしもない、舞台の人物の「生きている」すがたこそ、劇の面白さをつくりだすもとなのである。
3 劇のほんとうのおもしろさはどこにあるか
劇の面白さがそこから出てくるにはちがいないが、劇を面白くするには、それを十分に利用し、それをできるだけ印象の深いものにしなければならない。