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かご
加護
宮本 百合子
「大阪毎日新聞(夕刊)」1920(大正9)年8月17日~28日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,147 字 · 33 页
加護
宮本百合子
お幾の信仰は、何時頃から始まったものなのか、またその始まりにどんな動機を持っているのか、誰も知る者はなかった。ただそれと心附いた時には、もう十幾人という昔からの友達の中で、一人として彼女から、あらたかな天理王命(てんりおうのみこと)の加護に就て説き聞かされない者はないほどになっていた。
肥って、裕福で仕合わせなお幾は、友達仲間に、何か一寸した不幸でも起ったという噂を聞くと、先ず何事を置いても馳せつけて、その人達の心を慰めずには置かない。丸々と指のつけねにくぼみの入った両手を、盛り上った膝の左右に軽く支え、心持頭を左に傾けながら、
「フーム、フーム」
と心を入れて人の述懐を聞く彼女は、ほんとにどこから見ても気の良い親切な「おばさん」に見えた。種々な批評はしながらも、人々は彼女の正直な、快恬(かいてん)な気分に引立てられる。ただその後で必ず附きものになっている天理教の講釈と、信仰の勧めだけには、彼女が熱心であればあるほど、会うほどの者が悩まされずにはいなかったのである。
処女時代を、相当に高い教育で鍛えられて来た友達は、皆、半ばの揶揄(やゆ)と好奇心とに動かされながら、柄にもない信心に没頭し始めたお幾の行動を注目していた。