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かご
加護
宮本 百合子
「大阪毎日新聞(夕刊)」1920(大正9)年8月17日~28日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,147 字 · 33 页
そして、何かの折に彼女を中心として、例の信仰談に花が咲くと、いつとなく揃ってしめし合わせでもしたように熱烈なお幾の雄弁を、すらりすらりと除けながら、最後にはきっと、
「けれどもねお幾さん。私共には到底そんな信心深い心は持てないのですよ、そんなに有難い神様なら、あなた何故お恵さんを真先に信仰させてお上げにならないの?」
という一句で、止(とどめ)を刺すのが常であった。この一句さえ出れば、どんなに気負っていたお幾も気の毒なほど俄に悄然として、
「ほんとにねえ……」
と云ったまま、もう決して二度とその鋭鋒を現さない。そのこつを、皆はすっかり飲み込んでいたのである。然し誰一人、何故それほどお幾がそれを云われさえすると落胆するのか、理由は知らなかった。恵子とは子供の時分から中年になった今日まで一言「お仲よし」と云いさえすれば、あああの方達のことかと解るほど有名な仲よしで通って来た。そのお幾が、皆を辟易させるほどの真剣さを以ても、なお、第一の理解者であるべきお恵さんを説服し得ないということは、二人の性格を知り抜いている者には、一層不思議なことなのであった。
お稚児に結って、小学校に通っていた頃から、お恵さんは痩ぎすな、淋しい静かな子であった。