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かご

加護

宮本 百合子

「大阪毎日新聞(夕刊)」1920(大正9)年8月17日~28日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,147 字 · 33 页

青空文庫

「………」丸いお幾の顔には、当惑に近い苦しげな表情が表れた。

「それでね、考えれば考えるほど、いても立ってもいられない心持がして来るのです。きっと、自分が親として、また妻としてあまり至らないので、神様が惜しんであの子をお取上げになってしまったのではあるまいかとさえ思います。ほんとに広田や私の善いところだけを選んで生れついたような子でしたもの――」

「まさかそんなことがあって堪るものですかお恵さん、あなたがあまり思い過しておしまいになるのですよ、けれども――」

お幾は急に心を横切った或る内密な喜びで、我知らず顔中を輝かせた。

「若しあなたがそうお思いなさるのなら、心のすむようになさるのは好いことですわね」

「そうでしょう? ですからあなたもおっしゃるように、今度をいいきっかけにして私、天理教のお話でも伺って見ようかしらと思い立ちましたの。若し私が不束(ふつつか)な故で、淑子まで、可愛そうに、不仕合わせになったらそれこそ生きてはいられません。誠之のためにも何かの供養になるでしょう」お恵さんの頬にいつも絶えない、弱々しく淋しい微笑がまたそっと忍び込んだ。

「そして、皆にお詫を致しますの」