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かご

加護

宮本 百合子

「大阪毎日新聞(夕刊)」1920(大正9)年8月17日~28日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,147 字 · 33 页

青空文庫

お幾は、年頃の時代から、頭の痛いことさえ知らなかった。肥満し、動作が億劫にこそなれ、彼女は、今でも三十代と違わない活力を裡に蔵しているのである。

彼女には、お恵さんの弱りも、失望し、落胆した心から出るとほか思えなかった。

「病は気から」ということさえもある。――

それにしても、お幾の心の中では、次第に、こんなことでお恵さんが勇気を挫き、信仰の方も疎(おろそか)にしはしまいかという一事が不安になり始めた。

なかなか熱心な人を紹介されたと云って、自分も喜ばれている。一方から考えれば、それだけ、自分の信心力の強さも証明されたことになった。お恵さんのためにも、ここで止めては、今までの辛棒も、まるで無になると、思わずにはいられなくなったのである。

まして、物事には、何でも峠がある。字を稽古しても、琴を習っても、始めの間は面白いように上達する。こんなに手が上るかと、驚ろかれるほど進歩する。然し、或るところまで行くと、急にぴったりと先が塞(ふさが)り、もうどうにも仕方ないように感じることがある。いくら努めて見ても、目に立つ進境はなく、仕舞には、絶望の吐息と一緒に投げすてて終いたくさえ思う。